アーシュヴィナ・プールニマー・ヴラタ
アーシュヴィナ・プールニマー・ヴラタについて
アーシュヴィナ・プールニマー・ヴラタは、アーシュヴィナ月(9月〜10月)の満月の日に行われる断食および誓戒の実践を指します。
このヴラタは、シャラダ・プールニマーの神秘的な力、特に月光に宿る治癒力と繁栄のエネルギーを最大限に取り込むために行われます。
主にラクシュミー女神、インドラ神(雨と豊穣の神)、そして月神チャンドラを崇拝し、健康、富、そして夫婦の幸福を願って厳格な規律が守られます。
ヴラタの実践において最も象徴的で不可欠な儀式は、「キール(牛乳と米の甘いお粥)」の準備です。
人々は昼間の断食を守った後、夕方に牛乳を煮詰め、米と砂糖、カルダモンやサフランを加えたキールを作ります。
そして、このキールを薄い布で覆い、一晩中、あるいは数時間、満月の光が直接当たる屋外や窓辺に安置します。
月光から滴り落ちる「アムリタ(甘露)」がこのキールに染み込み、神聖な薬膳になると信じられているからです。
この「月光を浴びたキール」を翌朝、家族全員でプラサーダ(神からの恩寵)として頂くことが、このヴラタのハイライトであり、これによって無病息災が得られるとされています。
この日は「コージャーガラ・プージャー」とも呼ばれ、夜通し起きて過ごすこと(ジャーガラナ)が推奨されます。
人々は香りの良い花やお香で家を飾り、ラクシュミー女神の像の前で歌を歌ったりして夜を明かします。
眠ってしまうと女神の祝福を逃してしまうと言われているため、家族や友人が集まり、楽しく賑やかに過ごすのが特徴です。
また、象(アイラーヴァタ)に乗ったインドラ神への礼拝も行われ、良質な雨と豊作をもたらしてくれたことへの感謝が捧げられます。
健康面での意味合いも強く、アーユルヴェーダでは、秋(シャラダ)に悪化しやすい「ピッタ(火のエネルギー)」を鎮めるために、冷却作用のある月光浴や、同じく冷却作用を持つ牛乳・米・砂糖を用いたキールの摂取が理にかなっているとされます。
また、縫い針に糸を通す作業を月明かりの下で行うことで視力が良くなるという言い伝えもあり、実践されることがあります。
アーシュヴィナ・プールニマー・ヴラタは、単なる禁欲的な断食ではなく、自然界の美しいリズムと調和し、月の光を「食べる」ことで魂と肉体を養う、優雅で洗練された秋の祭礼となります。