ヴァイシャーカ・アマーヴァシャー
ヴァイシャーカ・アマーヴァシャーについて
ヴァイシャーカ・アマーヴァシャーは、ヴァイシャーカ月(4月〜5月)の新月の日を指します。
この日は、夏への移行が決定的となる時期の新月であり、特に北インドの多くの地域では「サトゥヴァーイー・アマーヴァシャー」の名で親しまれ、祖先崇拝と季節の食物の奉納が中心となる日です。
このアマーヴァシャーの最大の特徴は、祖先(ピトリ)への供養において、大麦やヒヨコマメを炒って粉にした「サットゥー」という食品を用いる点にあります。
サットゥーは体を冷やす効果が高い夏の健康食であり、この日に冷たい水と甘味を混ぜたサットゥーを、水を入れた素焼きの壺と共に僧侶に寄付することで、祖先の霊が夏の暑さから守られ、満足すると信じられています。
この行為は、単なる儀礼を超えて、過酷な夏を乗り切るための先人の知恵が、祖先への感謝という形で儀式化されたものと言えるでしょう。
また、この日は祖先の魂が地上に近づき、子孫からの供物を待っている日とされています。
人々は聖なる川、特にガンジス川で沐浴を行い、両手で水をすくって太陽と祖先に捧げる「タルパナ」を行います。この際、黒胡麻とクシャ草を用いるのが通例です。
さらに、ヴァイシャーカ・アマーヴァシャーは、否定的なエネルギーを浄化するために重要な日とも考えられています。
新月の暗闇の中で、ピーパルの木(インドボダイジュ)に水をやり、その周りを回って祈りを捧げることで、カーラ・サルパ・ドーシャなどの占星術的な不運や、家庭内のトラブルが解消されると信じられています。
人々は、自分たちの命が祖先から受け継がれたものであることを再確認し、夏の暑さが本格化する前に、涼しい供物を通じて祖先との絆を深め、精神的な安らぎを得ようとします。
このように、ヴァイシャーカ・アマーヴァシャーは、素朴ながらも深い慈愛に満ちた、祖先と生者のための癒やしの新月となります。