ヴァイシャーカ月の始まり
ヴァイシャーカ月の始まりについて
ヴァイシャーカ月の始まりは、西暦では概ね4月から5月にかけての時期に相当します。
インド亜大陸においては春(ヴァサンタ・リトゥ)から夏(グリーシュマ・リトゥ)へと季節が完全に移行し、大地が熱を帯び始める時期です。
ヒンドゥー教の伝統において、この月は非常に神聖な月と見なされており、「ダルマ(法)、ヤジュニャ(供犠)、クリヤー(行為)」の実践において最高の結果をもたらす月であると信じられています。
この月は、維持神ヴィシュヌの別名である「マドゥスーダナ」に捧げられています。
聖典プラーナには「ヴァイシャーカ月に勝る月はなく、サティヤ・ユガ(真理の時代)に勝る時代はなく、ヴェーダに勝る聖典はなく、ガンジス川に勝る聖地はない」と記されており、その重要性は計り知れません。
ヴァイシャーカ月が始まると同時に、人々は「ヴァイシャーカ・スナーナ」と呼ばれる早朝の沐浴を日課とします。
太陽が昇る前、まだ星が残る時間帯に冷たい水で身を清めることは、夏の暑さに対する肉体的な備えであると同時に、アシュヴァメーダ・ヤジュニャ(馬祀祭)を行うのと同等の功徳を魂にもたらすとされています。
季節的に気温が急上昇するため、この月における実践は「水」と深く結びついています。
神への祈りにおいて水を捧げることはもちろん、通りがかりの人々に冷たい水を提供する水飲み場を設置したり、鳥や動物のために水桶を用意したりすることが、最も崇高な慈善行為(ダーナ)として奨励されます。
また、この月はヒンドゥー教の三大神の活動が活発化する時期とも考えられています。
特にヴィシュヌ神の化身であるパラシュラーマ(斧を持つ戦士の化身)の降誕祭にも重なる「アクシャヤ・トリティーヤー」が、この月に祝われます。
アクシャヤ・トリティーヤーは、「決して尽きることのない幸運」を意味する大吉日であり、ラクシュミー女神への盛大な礼拝が行われると共に、ヴァイシャーカ月の神聖さを象徴する祝日の一つです。
ヴァイシャーカ月の始まりは、自然界が最も過酷な暑さに向かう時期でありながら、精神的には最も豊潤な実りを約束された期間への入り口でもあります。
人々は暑さの中で自らを律し、早起きと水による浄化を徹底し、他者への慈悲を具体的な行動で示すことによって、神の恩寵を受けようと努めます。
このように、ヴァイシャーカ月は、物理的な環境の厳しさと反比例するように、人々の信仰心が涼やかで清浄な境地を目指して高まっていく、祈りと奉仕の季節となります。