ブラフマ・サーヴァルニ・マンヴァーディ
ブラフマ・サーヴァルニ・マンヴァーディについて
ヒンドゥー教では、創造神ブラフマーの1日を「カルパ(劫)」と呼びます。
その長さは、人間の時間に換算するとおよそ43億2千万年という、気が遠くなるほどの時間です。
このカルパはさらに14の期間に分けられており、それぞれの期間には「マヌ」と呼ばれる統治者が置かれます。
このひとつの期間は「マヌの治世」を意味する「マンヴァンタラ」と呼ばれ、その長さは約3億672万年にも達します。
マンヴァンタラが変わるたびに、神々や七聖仙、さらに神々の王までもが入れ替わり、世界の秩序そのものが大きく刷新されます。
また、各マンヴァンタラの初日である「マンヴァーディ」は、宇宙の創造力が地上に満ちる特別な日とされ、重要な節目として位置づけられています。
このヒンドゥー教が説く雄大な宇宙の流れにおいて、第9番目のダクシャ・サーヴァルニ・マヌからバトンを受け継ぐのが、第10番目のブラフマ・サーヴァルニ・マヌです。
ブラフマ・サーヴァルニの名前には、創造主であり宇宙の根本原理である「ブラフマー」の名が冠されています。
これは、ブラフマ・サーヴァルニ・マヌの統治する時代が、単なる法による支配を超え、宇宙の深淵なる叡智(ブラフマ・ヴィディヤー)と、霊的な探求が社会の中心となる高度な精神文明の時代であることを予感させます。
ブラフマ・サーヴァルニ・マヌは、知識と太陽の輝きが完全に融合した、聖なる未来の指導者です。
ブラフマ・サーヴァルニ・マヌの統治が始まるとされる神聖な日、すなわちマンヴァーディ・ティティは、マーガ月(1月〜2月)におけるシュクラ・パクシャ(新月から満月へ向かう半月)の7日目(サプタミー)、「マーガ・シュクラ・サプタミー」にあたります。
この日は、現在でも「ラタ・サプタミー(馬車の7日)」あるいは「アチャラ・サプタミー(不動の7日)」として盛大に祝われる、太陽神スーリヤの降誕日とも言える吉日です。
太陽神が七頭の馬に引かれた黄金の馬車に乗り、北半球への運行(ウッタラーヤナ)を本格化させ、地上に降り注ぐ光と熱が力強さを増し始めるこのタイミングに、第10番目のマヌの記念日が定められています。
この一致は、ブラフマ・サーヴァルニ・マヌの時代が「太陽」と「健康」、そして「啓蒙」の時代であることを強く示唆しています。
ラタ・サプタミーは、病気平癒や長寿を願う日とされ、「太陽から健康を欲せよ」という古代の教えが実践される日です。
したがって、第10番目のマヌの治世は、人々が肉体的な病から解放され、強靭な生命力を持って霊的な活動に専念できる、黄金の時代となることが期待されます。
予言によれば、この時代の神々の王インドラの座には、「シャンブ」という名の神が就くとされています。
「シャンブ」とは一般的にシヴァ神の別名であり、「吉祥をもたらす者」「慈悲深い者」を意味します。
未来のインドラがこの名を持つことは、その統治が武力によるものではなく、慈愛と平和によって維持されることを暗示しています。
また、人類を導く七聖仙(サプタリシ)には、ハヴィシュマーンやスクリティといった、「神聖な供物」や「善行」を意味する名を持つ賢者たちが選ばれています。
彼らは、清らかな儀式と正しい行いこそが、人と神を繋ぐ架け橋であることを未来の人類に説いています。
マーガ月(1月〜2月)のシュクラ・パクシャの7日目、東の空から昇る太陽を拝するとき、私たちは未来の第10番目のマヌのエネルギーと交信します。
この日に行う「アルギャ(聖水の奉納)」は、太陽への感謝であると同時に、自身の内にある無知の闇を焼き払い、ブラフマ・サーヴァルニ・マヌのような叡智の輝きを目覚めさせるための儀式でもあります。
たとえ遠い未来の話であっても、太陽が毎朝昇るように、希望と智慧の時代は必ず巡ってきます。
ラタ・サプタミーの朝日の暖かさは、そんな未来からの確かな約束として、私たちの心身を浄化し、前へと進む活力を与えてくれています。