ダクシャ・サーヴァルニ・マンヴァーディ
ダクシャ・サーヴァルニ・マンヴァーディについて
ヒンドゥー教では、創造神ブラフマーの1日を「カルパ(劫)」と呼びます。
その長さは、人間の時間に換算するとおよそ43億2千万年という、気が遠くなるほどの時間です。
このカルパはさらに14の期間に分けられており、それぞれの期間には「マヌ」と呼ばれる統治者が置かれます。
このひとつの期間は「マヌの治世」を意味する「マンヴァンタラ」と呼ばれ、その長さは約3億672万年にも達します。
マンヴァンタラが変わるたびに、神々や七聖仙、さらに神々の王までもが入れ替わり、世界の秩序そのものが大きく刷新されます。
また、各マンヴァンタラの初日である「マンヴァーディ」は、宇宙の創造力が地上に満ちる特別な日とされ、重要な節目として位置づけられています。
このヒンドゥー教が説く雄大な宇宙の流れにおいて、第8番目のサーヴァルニ・マヌからバトンを受け継ぐのが、第9番目のダクシャ・サーヴァルニ・マヌです。
その名は「ダクシャ(有能な、熟練した)」という言葉に由来し、ダクシャ・サーヴァルニ・マヌが訪れる時代において、法(ダルマ)が極めて効率的かつ完璧な形で執行されることを予感させます。
現在はまだ神話の彼方にある未来の存在ですが、ダクシャ・サーヴァルニ・マヌがもたらす秩序への希望は、現代を生きる私たちにも重要なメッセージを投げかけています。
ダクシャ・サーヴァルニ・マヌの統治が始まるとされる神聖な日、すなわちマンヴァーディ・ティティは、アーシュヴィナ月(9月〜10月)におけるシュクラ・パクシャ(新月から満月へ向かう半月)の9日目(ナヴァミー)、「アーシュヴィナ・シュクラ・ナヴァミー」にあたります。
この日付は、ヒンドゥー教徒にとって特別な高揚感を伴うものです。
なぜなら、この日は一年で最も重要な女神の祭典「ナヴァラートリ(ドゥルガー女神を崇める九夜祭)」のクライマックス、すなわち「マハー・ナヴァミー(偉大なる第9日)」そのものだからです。
悪魔マヒシャースラに対するドゥルガー女神の勝利が決定的となるこの聖なる日が、未来のマヌの記念日であるという事実は、ダクシャ・サーヴァルニ・マヌの時代が悪に対する正義の完全なる勝利と、女神の恩寵によって守護される輝かしい時代であることを強く示唆しています。
ダクシャ・サーヴァルニ・マヌの時代、宇宙を統御するインドラ神の座には「アドブタ」という名の神が就くと予言されています。
その名の通り、常識を超えた奇跡や驚異が日常的に現れる世界と考えられます。
また、人類を導く七聖仙(サプタリシ)には、デュティマットといった、知性と真理を象徴する賢者たちが名を連ねます。
彼らは、現代社会が失いつつある深い精神的洞察と、揺るぎない真実への献身を、未来の人類に再び植え付ける役割を担うとされます。
ダクシャ・サーヴァルニ・マヌの治世は、単なる平和な時代ではなく、霊的な能力が開花し、人間が神に近い領域へと進化する「驚異の時代」となることが期待されています。
アーシュヴィナ月(9月〜10月)のシュクラ・パクシャの9日目、祭りの熱気が最高潮に達するこの日、私たちは女神への礼拝を通じて、知らず知らずのうちに未来のマヌとも波長を合わせています。
この日に行われる「アーユダ・プージャー(武器や道具への礼拝)」や、知恵の女神への祈りは、ダクシャ(有能さ)を磨くための儀式でもあります。
私たちが自分の技術や知性を磨き、それを正義のために使うと誓うとき、それは遥か未来に訪れるダクシャ・サーヴァルニ・マヌの精神を先取りし、その到来を準備する行為となります。
秋の澄んだ空気に祭りの太鼓の音が響き渡るマハー・ナヴァミーの夜、私たちは現在直面している困難や戦いが、やがて来るべき輝かしい勝利と秩序へと繋がっていることを信じます。