ビーシュマ・ドヴァーダシー
ビーシュマ・ドヴァーダシーについて
ビーシュマ・ドヴァーダシーは、『マハーバーラタ』に登場する英雄ビーシュマが肉体を離れ、霊的な解放に至った時を祝う吉日です。
マーガ月(1月〜2月)のシュクラ・パクシャ(新月から満月へ向かう半月)の12日目に祝われます。
この日は、神の誕生や勝利ではなく、一人の人間が死という運命を超越したことを讃える点に特徴があります。
神話によれば、ビーシュマは天界のヴァス神群の一柱として存在していましたが、過去の行為によって地上に生まれることとなりました。
そして、クル王シャーンタヌと河の女神ガンガーの子としてデーヴァヴラタの名で誕生すると、王位を継承する者となります。
しかし、父王の再婚を実現させるため、王位を放棄し、生涯独身を貫くという厳しい誓いを立てました。
この自己犠牲により「ビーシュマ(恐るべき誓いを立てた者)」と呼ばれるようになり、父王から望む時に死を迎えられる力を授かったとされます。
クルクシェートラの戦いにおいて、ビーシュマは誓いに従い、カウラヴァ側の総大将として戦いました。
戦いの10日目、アルジュナの放った無数の矢を受け、全身を貫かれますが、即死することはありませんでした。
矢が身体を支え、地に触れない「矢の寝床」の状態となり、ビーシュマはそのまま死を選ばずに時を待ち続けました。
時は太陽が南へ進むダクシナーヤナの期間であり、この時期に死を迎えると再生の輪に戻ると信じられていました。
ビーシュマは、太陽が北へ進むウッタラーヤナを待ち、その間、58日間にわたり激しい苦痛に耐えながら生命エネルギーを保ち続けました。
そして北回帰が始まった後、意識的に呼吸を手放し、解脱の道へと進んだとされています。
この間、ビーシュマは沈黙していたわけではなく、ユディシュティラ王に対し、王の義務や正義、解脱に至る教えを語りました。
これらは『マハーバーラタ』の「シャーンティ・パルヴァ」としてまとめられています。
ビーシュマの死に関しては、マーガ月(1月〜2月)のシュクラ・パクシャ(新月から満月へ向かう半月)の8日目(アシュタミー)と12日目(ドヴァーダシー)という二つの日が重視されます。
霊的解釈では、アシュタミーはビーシュマが外界との感覚を断ち、サマーディに入り、肉体から離れる準備を始めた日とされます。
一方、ドヴァーダシーは魂が完全に肉体を離れ、葬送儀礼が行われて霊的解放が成就した日と考えられます。
このため、アシュタミーは魂の決断の日、ドヴァーダシーは平安と完成の日として祝われます。
ビーシュマは生涯独身を守ったため、子を持ちませんでしたが、その徳の高さから、ビーシュマ・ドヴァーダシーには全ての人が息子として水と胡麻を捧げる「タルパナ」の儀礼が行われます。
これは感謝と供養であると同時に、自己の浄化を願う行為でもあります。
ビーシュマ・ドヴァーダシーは、運命に対する人間の意志の勝利を象徴しています。
この聖日は、遠い過去の英雄を追憶するだけでなく、私たち自身の内にある「不滅の精神」を再確認する日として受け継がれています。