ポーラー
ポーラーについて
ポーラーは、主にインド中部の農村地帯において、バードラパダ月(8月〜9月)のアマーヴァシャー(新月)に行われる祭りです。
この祭りは、農業に欠かせない雄牛たちに感謝を捧げる、心からの祈りと祝福の日として知られます。
この祝いを通して、人間と動物、そして自然との深いつながりが、美しい儀礼のかたちで表現されます。
モンスーンの雨が大地を潤し、農村が緑に包まれるこの季節。
ポーラーは、1年を通じて田畑を耕し続けた雄牛たちへの感謝を形にする日です。
この日、雄牛は労働から解放され、神聖な存在として村人たちの崇敬を受けます。
祭りの前日から準備は始まります。
飼い主たちは雄牛の体を川や湖で洗い清め、ウコンや香油を塗って身を整えます。
鮮やかな色で角を彩り、刺繍布を背にかけ、首には花輪や鈴が飾られます。
その姿は、もはや神々の使者のような威厳をたたえています。
祭り当日、雄牛たちは村の広場や寺院に集まり、僧侶によるプージャー(供養)が捧げられます。
額には祝福の印ティラカが付けられ、聖火とマントラの響きの中で、神聖な雰囲気が村全体を包みます。
家庭では「プーラン・ポーリー」と呼ばれる甘い供物が用意され、まずは雄牛に供えられます。
この行為には、雄牛を労働の道具ではなく、家族の一員、神の現れとして見る深い敬意が込められています。
ポーラーにはまた、「ポーラースラ」という悪魔を打ち倒したクリシュナ神の神話が伝えられています。
村人を苦しめていた悪魔を新月の日に退治したこの物語は、ポーラーが単なる感謝祭ではなく、悪を祓い、平和と豊穣を祈願する霊的な意味を持つことを教えてくれます。
雄牛に感謝し、神話をなぞり、自然の恵みに感謝するポーラーは、農村社会に根ざしたヒンドゥー教の教えの体現です。
そこには、目に見えぬ存在への敬意、自然との共生、生命への畏敬といった、現代にも通じる普遍的な精神が宿っています。