バフラー・チャトゥルティー
バフラー・チャトゥルティーについて
インド西部を中心に祝われる「バフラー・チャトゥルティー」は、真実の力を称える深い精神的意義を持つ吉日です。
この祭日は、バードラパダ月(8月〜9月)のクリシュナ・パクシャ(満月から新月へ向かう半月)のチャトゥルティー(4日目)に祝われます。
バフラー・チャトゥルティーの中心には、バフラーという一頭の牛の物語があります。
かつて、子牛を育てていたバフラーは、森の中で飢えたライオンに遭遇します。
死を覚悟しながらも、我が子に最後の乳を与える時間を求めたバフラーは、誠実な約束のもと一度牛舎へ戻ります。
子牛に乳を与え別れを告げた後、バフラーは約束通り夜明け前に再び森へ戻り、ライオンの前に立ちました。
バフラーの誠実さに心打たれたライオンは姿を消し、そこにクリシュナ神が現れます。
バフラーが貫く「サティヤ(真実)」と「ダルマ(正義)」を讃え、クリシュナ神はバフラーに加護と祝福を授けます。
こうしてバフラーの行為は、人々が見習うべき模範となり、この日に牛と子牛を崇め、乳製品を断つ伝統が始まりました。
この祭りが行われる時期も意味深く、モンスーンで大地が潤い、生命力が満ちる季節です。
そこには、自然と共に生きる牛への感謝が込められています。
また、月が欠けていく「クリシュナ・パクシャ」は、内面の浄化や精神的成長を象徴し、人々は欲望を断ち、より高次の真理と向き合います。
乳製品を断つのは、命の恵みに感謝し、バフラーの犠牲を思い起こす修練でもあります。
バフラー・チャトゥルティーの日には、特に既婚女性が家族の幸福と子供の成長を祈って断食し、牛と子牛を清め、飾り立てて祈りを捧げます。
土で作った牛やライオンの像を祀り、バフラーの物語を語り合うことで、その教えを再確認します。
断食も厳格で、乳製品や果物を避け、精神の浄化を深めます。
バフラー・チャトゥルティーは、言葉を持たぬ動物が示した驚くべき誠実と自己犠牲の物語を通じ、私たちに「真実と共に生きること」の尊さを教えてくれます。
自然や命への感謝、そして他者を思いやる心を育むこの祭りは、現代に生きる私たちにも大切な価値を伝え続けています。