ヴァルーティニー・エーカーダシー
ヴァルーティニー・エーカーダシーについて
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、ヴィシュヌ神に捧げられる日となり、断食や瞑想を行うことが勧められます。
ヴァイシャーカ月(4月〜5月)のクリシュナ・パクシャ(満月から新月へ向かう半月)の11日目にあたるエーカーダシーは、ヴァルーティニー・エーカーダシーといわれます。
このヴァルーティニー・エーカーダシーは、強い守りがもたらされると伝えられる吉日です。
一説に、以下のような神話が伝わります。
かつて、ナルマダー川のほとりにある王国にマーンダーターという名の王が暮らしていました。
マーンダーター王はヴィシュヌ神の偉大な信者であると同時に、裕福で慈悲深く、高貴な生き方をしていました。
ある時、マーンダーター王が森でヴィシュヌ神の瞑想を行っていると、突然、野生のクマに襲われます。
しかし、マーンダーター王はヴィシュヌ神への瞑想を続け、怒りと苦しみを抑え込みました。
その揺るぎない忠誠心を見たヴィシュヌ神は、マーンダーター王をクマから救います。
しかし、マーンダーター王はクマに襲われた痛みに苦しみます。
ヴィシュヌ神はマーンダーター王に、その苦しみは前世の罪の結果であるといいました。
そして、ヴァルーティニー・エーカーダシーのヴラタ(戒行)を行うことを勧めます。
そうしてマーンダーター王がヴァルーティニー・エーカーダシーを努めると、すべての罪から解放され、より強い王になったと伝えられます。
ヴァルーティニー・エーカーダシーのヴラタ(戒行)を通じては、この他にも数々の王たちが救われ、成功を得たと伝えられます。
また、欲望にまみれ驕り高ぶった態度を見せたブラフマー神を罰するために、5つあったブラフマー神の頭のひとつを切り落としたシヴァ神は、その際に受けた呪いを、このヴァルーティニー・エーカーダシーの戒行によって払拭したともいわれます。
不幸な境遇にある女性たちは、このヴァルーティニー・エーカーダシーを通じ救われると伝えられることもあります。
ヴァルーティニーには、「軍隊」や「兵士」といった意味があり、このヴァルーティニー・エーカーダシーのヴラタ(戒行)を努める者には、強い守りがもたらされると信じられています。
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、神々に祈りながら断食によって感覚器官を統制し、体と心を清める吉日です。
11が意味するものは、5つの感覚、5つの器官、そして心を合わせた11のものであり、エーカーダシーにおいてはそれらを統制することが重要な行いとなります。
この満月・新月からの11日目は、月の満ち欠けから生じる引力の影響から、感覚器官や心の働きが落ち着き、体に感じる空腹の影響も少なく、断食も行いやすいものであると伝えられます。
特に断食は、絶え間なく働き続けていた体のあらゆる部分を休ませ、忙しなくあちこちに飛び散っていた意識を落ち着かせます。
体の浄化に加え、欲から切り離されることで心の雑念までもが洗い流され、神が宿る場所としての肉体、精神が生み出されていきます。
困難を伴う感覚の統制も、瞑想やジャパなどを通じ崇高者に心を定めることで容易なものとなります。
エーカーダシーを通じ瞑想するヴィシュヌ神の本質は、時の流れにかかわらず、宇宙が生成する以前に存在し、そして消滅した後も存在し続けるといわれます。
エーカーダシーは、万物の中にあまねく浸透する存在と一つとなる機会でもあります。