ピトリ・パクシャ
ピトリ・パクシャについて
ピトリ・パクシャは、インドにおける先祖供養の期間にあたります。
日本において先祖供養が行われるお彼岸の中日は、秋分の日(昼と夜の長さがほぼ同じになる日)として知られています。
悟り(仏)の世界を彼岸、煩悩に満ちた世界を此岸と呼ぶ仏教では、彼岸は西に、此岸は東にあるとされてきました。
太陽が真東から昇り真西に沈むこの秋分(また春分)は、彼岸と此岸がもっとも通じやすくなるとされ、この時に先祖を供養する行いがされるようになったといわれます。
インドではこの先祖供養にあたるのが、ピトリ・パクシャと呼ばれる期間です。
バードラパダ月(8月〜9月)の満月からアーシュヴィナ月(9月〜10月)の新月までの約2週間がその時にあたります。
この間は、先祖が地上にもっとも近づくといわれ、熱心な先祖供養が行われます。
それにはある言い伝えがあります。
マハーバーラタに登場する不死身の英雄カルナ王は、多くの人々に金や銀を与えてきましたが、天界に行った時、食事と水を与えられず空腹に苦しみました。
それは、カルナ王が人々に金と銀しか与えず、食事と水を施さなかったことに理由がありました。
神々はカルナ王に、地上に戻り人々に食事と水を施す機会を与えます。
再び地上に戻り、人々へ食事と水を施したカルナ王は、その後、天界で幸せに暮らしたと伝えられます。
カルナ王が地上に戻ったのが、このピトリ・パクシャの約2週間であるとされ、人々は先祖だけでなく、貧しい人々への食事の施しを熱心に行います。
インドでは、私たちは先祖と血縁関係で結ばれているだけでなく、先祖の行いや思いの影響を非常に強く受けていると信じられています。
先祖を飢えさせないよう、先祖だけでなく、貧しい人々にも食事や水を恵むことで、先祖の魂は満たされ、私たちもまた祝福されると伝えられます。
何より、そうして行われる善行こそが私たち自身の行いを清め、これから先をより良い方向へ導くと信じられています。