カーリー・ジャヤンティー
カーリー・ジャヤンティーについて
カーリー・ジャヤンティーは、カーリー女神の降誕日として崇められます。
バードラパダ月(8月〜9月)のクリシュナ・パクシャ(満月から新月へ向かう半月)の8日目がその日にあたります。
カーリー女神は、ドゥルガー女神の10の化身であるダシャ・マハーヴィディヤー(10柱の大いなる叡智の女神)の1柱として崇められます。
暗い肌、乱れた髪、頭蓋骨の首飾り、切断された腕でできたスカートを身につけたカーリー女神の姿は、一見恐ろしげに見えるも、深い象徴的な意味を持っています。
カーリー女神の姿は、生と死、創造と破壊、時間と永遠といった宇宙の根本的な真理を表現しています。
暗い肌の色は全ての創造が生まれ、最終的に溶解する全包括的な虚空を、乱れ飛ぶ髪は束縛されない自由と力を象徴しています。
首の周りの頭蓋骨の首飾りは時間の循環と死の不可避性を、切断された腕のスカートは自我と執着の破壊を意味しています。
こうして示されるカーリー女神の図像は、偽りの自己意識や物質的存在に縛り付いた幻想を手放し、個人の自我の限界を超えて神聖な意識と融合するよう人々に気づきを与えています。
カーリー女神の信仰において興味深いのは、帰依者と女神の関係性です。
帰依者は子どものような純粋さで女神に接する一方で、カーリー女神は慈愛に満ちた母親のような存在として帰依者を見守ります。
この親密な関係性が、カーリー信仰の中核を成しています。
そんなカーリー女神の起源には、悪魔ラクタヴィージャと戦う有名な神話が伝わります。
ラクタヴィージャは、地面に滴り落ちると無数の分身を次々と生み出す恐ろしい血を持っていました。
戦いに挑んだドゥルガー女神は、ラクタヴィージャを倒そうとするも、悪魔が次々に生まれ、窮地に立たされます。
すると、長く伸びた真っ赤な舌を持つカーリー女神があらわれ、ラクタヴィージャの血をすべて飲みつくしました。
そうして、ラクタヴィージャは倒されたと伝えられます。
この悪魔との激しい戦いの中で、カーリー女神は我を忘れ、見えるすべてを破壊し続けました。
この状況を静めるため、夫であるシヴァ神は身を投げ出してカーリー女神の下敷きなります。
夫であるシヴァ神を踏んだことで我に返ったカーリー女神は、驚きのあまり舌を出し、そこで殺戮を止めたと伝えられています。
カーリー・ジャヤンティーの日には、多くの人々が祈りを捧げます。
カーリー女神への礼拝は、黒魔術の影響を取り除き、悪霊から身を守る効果があると信じられています。
また、占星術的な観点からは、人生に不幸や苦難をもたらすとされる土星の悪影響を和らげる力があると考えられています。
カーリー・ジャヤンティーは、破壊と創造、恐怖と慈愛という相反する要素を併せ持つカーリー女神の複雑な性質を理解し、生きる力を得る重要な機会として受け継がれています。