デーヴァシャヤニー・エーカーダシー
デーヴァシャヤニー・エーカーダシーについて
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、ヴィシュヌ神に捧げられる日となり、断食や瞑想を行うことが勧められます。
アーシャーダ月(6月〜7月)のシュクラ・パクシャ(新月から満月へ向かう半月)の11日目にあたるエーカーダシーは、デーヴァシャヤニー・エーカーダシーといわれます。
このデーヴァシャヤニー・エーカーダシーは、あらゆる幸福と究極の解放を得る恩寵が与えられると伝えられる吉日です。
一説に、以下のような神話が伝わります。
かつて、勇敢で平和を愛するマーンダーターと呼ばれる王がいました。
マーンダーター王の治世のもと、王国は常に喜びと繁栄に満ちており、人々が貧困や病気に悩むことはありませんでした。
しかし、ある時、致命的な干ばつが王国を襲い、人々は飢えに苦しみ始めます。
王国がこれほどの規模の干ばつに見舞われることはなかったため、マーンダーター王は悩み、解決策を求めました。
その探索の中、マーンダーター王は森の奥深くで、高名な賢者のアンギラーに出会います。
マーンダーター王が賢者に助けを求めると、このデーヴァシャヤニー・エーカーダシーを行うように勧められます。
賢者の助言に従い、マーンダーター王がデーヴァシャヤニー・エーカーダシーの断食を始めると、王国は飢饉から解放され、再び平和と繁栄が訪れたといわれます。
デーヴァシャヤニー・エーカーダシーは、およそ4ヶ月にわたるインドの雨季の始まりにあたります。
デーヴァシャヤニーには「神が眠る」という意味があり、この雨季の4ヶ月の間、ヴィシュヌ神が眠りにつくと信じられています。
この期間は、太陽が北から南へ動くダクシナーヤナ(夏至より冬至に向かう時)にあたり、夜が長くなることで冷たい月の影響が人々の心に大きく作用します。
この時期は「神々の夜」ともいわれるように、雨季の恵みの雨が降り注ぐ一方で、ネガティブなエネルギーが満ちる時と考えられてきました。
この期間に行われる大きな祭りや儀式は、私たちを神々へ近づけると同時に、実践される善行がネガティブなエネルギーを払拭し、ポジティブなエネルギーを生み出すと信じられています。
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、神々に祈りながら断食によって感覚器官を統制し、体と心を清める吉日です。
11が意味するものは、5つの感覚、5つの器官、そして心を合わせた11のものであり、エーカーダシーにおいてはそれらを統制することが重要な行いとなります。
この満月・新月からの11日目は、月の満ち欠けから生じる引力の影響から、感覚器官や心の働きが落ち着き、体に感じる空腹の影響も少なく、断食も行いやすいものであると伝えられます。
特に断食は、絶え間なく働き続けていた体のあらゆる部分を休ませ、忙しなくあちこちに飛び散っていた意識を落ち着かせます。
体の浄化に加え、欲から切り離されることで心の雑念までもが洗い流され、神が宿る場所としての肉体、精神が生み出されていきます。
困難を伴う感覚の統制も、瞑想やジャパなどを通じ崇高者に心を定めることで容易なものとなります。
エーカーダシーを通じ瞑想するヴィシュヌ神の本質は、時の流れにかかわらず、宇宙が生成する以前に存在し、そして消滅した後も存在し続けるといわれます。
エーカーダシーは、万物の中にあまねく浸透する存在と一つとなる機会でもあります。