パウシャ・プトラダー・エーカーダシー
パウシャ・プトラダー・エーカーダシーについて
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、ヴィシュヌ神に捧げられる日となり、断食や瞑想を行うことが勧められます。
パウシャ月(12月〜1月)のシュクラ・パクシャ(新月から満月へ向かう半月)の11日目にあたるエーカーダシーは、パウシャ・プトラダー・エーカーダシーといわれます。
このパウシャ・プトラダー・エーカーダシーは、子宝を望む人々にとって大きな恩寵があると伝えられる吉日です。
一説に、以下のような神話が伝わります。
かつて、バドラーヴァティー王国にスケートゥマーンという名前の王が暮らしていました。
スケートゥマーン王とその妃は子どもに恵まれず、王国を継ぐ者がいないことを悩ましく思う日々を過ごしていました。
それだけでなく、自分たちが肉体を離れた時、供養をしてくれる子孫がいないために、この世を彷徨い続ける満たされない魂になることを恐れていました。
先祖たちに対しても、これから供養がされなくなることを考えひどく思い悩みます。
スケートゥマーン王は苦しみ、深い森や山を放浪し続けました。
すると、ヒマーラヤの聖地マーナサローヴァル湖に似た、美しい蓮が咲き乱れる湖に辿り着きます。
そこにあったアーシュラムには、10人の賢者たちの姿がありました。
この情景を見た時、スケートゥマーン王の右手と右目が震え始め、スケートゥマーン王は何か吉祥なことが起こることを予感します。
スケートゥマーン王は、そこにいた賢者たちに救いを求めました。
賢者たちはヴィシュヴァデーヴァ(神々)で、吉日に沐浴をするために、その聖地を訪れていたことがわかりました。
この日は、パウシャ・プトラダー・エーカーダシーでした。
賢者たちは、スケートゥマーン王にこのパウシャ・プトラダー・エーカーダシーにおいて断食の戒行をすることを勧めます。
プトラダーには息子や子孫を与えるという意味があり、まさにスケートゥマーン王の願望を叶えるにふさわしい吉日でした。
ヴィシュヴァデーヴァの助言により、スケートゥマーン王はこの日に苦行を努めます。
そして、王国に戻ったスケートゥマーン王は妃との間に息子を授かったと伝えられます。
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、神々に祈りながら断食によって感覚器官を統制し、体と心を清める吉日です。
11が意味するものは、5つの感覚、5つの器官、そして心を合わせた11のものであり、エーカーダシーにおいてはそれらを統制することが重要な行いとなります。
この満月・新月からの11日目は、月の満ち欠けから生じる引力の影響から、感覚器官や心の働きが落ち着き、体に感じる空腹の影響も少なく、断食も行いやすいものであると伝えられます。
特に断食は、絶え間なく働き続けていた体のあらゆる部分を休ませ、忙しなくあちこちに飛び散っていた意識を落ち着かせます。
体の浄化に加え、欲から切り離されることで心の雑念までもが洗い流され、神が宿る場所としての肉体、精神が生み出されていきます。
困難を伴う感覚の統制も、瞑想やジャパなどを通じ崇高者に心を定めることで容易なものとなります。
エーカーダシーを通じ瞑想するヴィシュヌ神の本質は、時の流れにかかわらず、宇宙が生成する以前に存在し、そして消滅した後も存在し続けるといわれます。
エーカーダシーは、万物の中にあまねく浸透する存在と一つとなる機会でもあります。