アジャー・エーカーダシー
アジャー・エーカーダシーについて
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、ヴィシュヌ神に捧げられる日となり、断食や瞑想を行うことが勧められます。
バードラパダ月(8月〜9月)のクリシュナ・パクシャ(満月から新月へ向かう半月)の11日目にあたるエーカーダシーは、アジャー・エーカーダシーといわれます。
このアジャー・エーカーダシーは、過去の罪からの解放がもたらされると伝えられる吉日です。
一説に、以下のような神話が伝えられます。
かつて、とても敬虔で誠実なハリシュチャンドラという名前の王が暮らしていました。
ハリシュチャンドラ王には、チャンドラマティーという妻と、ローヒターシュヴァという息子がいました。
しかし、運命の力によってハリシュチャンドラは偉大な王国を失い、妻と息子を手放さなければならなくなります。
敬虔なハリシュチャンドラ自身も、火葬場の守衛をさせられるようになりました。
そのような状態で何年も過ごすも、ハリシュチャンドラは誠実さと善良な性格を失わずに、この窮状から救われる方法を思い巡らします。
ある日、偉大な聖仙であるガウタマ仙が通りかかります。
ハリシュチャンドラはガウタマ仙に敬意を示すとともに自らの哀れな物語を語り始めます。
ガウタマ仙は、ハリシュチャンドラの悲惨な話を聞いて心を痛め、苦難を生み出す原因となっている無意識に犯してしまった罪を清めるための断食を指導しました。
ガウタマ仙は、バードラパダ月(8月〜9月)のクリシュナ・パクシャ(満月から新月へ向かう半月)の11日目に、あらゆる罪を取り除く恩寵がある、アジャー(アーンナダ)というエーカーダシーがあることを伝えます。
アジャーには、太陽や火の神でありカルマを焼き尽くすアグニの意味があります。
この日に断食をし、睡眠を絶って祈りを捧げれば、過去の罪は清められ苦難は終わることを告げました。
そして、ガウタマ仙の指示に従いアジャー・エーカーダシーの断食を行うと、ハリシュチャンドラの過去の罪から生じていた苦難はただちに終わりを迎えたといわれます。
このエーカーダシーの力によって、ハリシュチャンドラは失った妻と息子に再会し、難なく王国を取り戻しました。
さらに、ハリシュチャンドラ王がこの地を去ったとき、すべての親類と臣下も一緒に霊界へ行ったと伝えられます。
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、神々に祈りながら断食によって感覚器官を統制し、体と心を清める吉日です。
11が意味するものは、5つの感覚、5つの器官、そして心を合わせた11のものであり、エーカーダシーにおいてはそれらを統制することが重要な行いとなります。
この満月・新月からの11日目は、月の満ち欠けから生じる引力の影響から、感覚器官や心の働きが落ち着き、体に感じる空腹の影響も少なく、断食も行いやすいものであると伝えられます。
特に断食は、絶え間なく働き続けていた体のあらゆる部分を休ませ、忙しなくあちこちに飛び散っていた意識を落ち着かせます。
体の浄化に加え、欲から切り離されることで心の雑念までもが洗い流され、神が宿る場所としての肉体、精神が生み出されていきます。
困難を伴う感覚の統制も、瞑想やジャパなどを通じ崇高者に心を定めることで容易なものとなります。
エーカーダシーを通じ瞑想するヴィシュヌ神の本質は、時の流れにかかわらず、宇宙が生成する以前に存在し、そして消滅した後も存在し続けるといわれます。
エーカーダシーは、万物の中にあまねく浸透する存在と一つとなる機会でもあります。