ピトーリー・アマーヴァシャー
ピトーリー・アマーヴァシャーについて
ピトーリー・アマーヴァシャーは、母性の祈りと祖先の供養が重なる特別な吉日です。
女神の慈悲のもと、母の無償の愛と祖霊への敬意が交差するこの神聖な日は、バードラパダ月(8月〜9月)のアマーヴァシャー(新月)に祝われます。
ピトーリー・アマーヴァシャーのピトーリーは、儀礼に用いる小麦粉や米粉「ピーター」に由来し、生命の儚さと再生を象徴します。
神話では、7人の子どもたちを次々と亡くした悲しみの中の女性が、新月の日に森で出会った64柱の女神ヨーギニーたちの導きにより、祈りと供物を捧げたことで子どもたちを取り戻す奇跡が描かれています。
この物語は、母の祈りの力と女神の慈悲を象徴し、以来、子を持つ母親たちがこの日に誓願(ヴラタ)を行うようになりました。
母親たちは夜明けとともに断食を始め、心と体を清めます。
米粉や小麦粉でヨーギニーやドゥルガー女神、あるいは自分の子どもを象った小さな像を作り、祭壇に並べて灯明をともします。
そこに花や供物を捧げ、祈りを行います。
供物にはプーリーやキールといった料理が用意され、家族で神話を語り合った後、像は水に流して自然へと還します。
これは、生命が循環し、宇宙の摂理に従って存在が還元されていくことを表しています。
粉から偶像を形作り、水に還すこの一連の流れは、形あるものがやがて自然へと戻るという無常の理を示し、滅びゆく姿の奥にある、永遠なる命の本質を映し出しています。
この祭りにおいてとりわけ重要なのが、64柱のヨーギニーたちへの祈りです。
ヨーギニーたちは、女神シャクティの多様な力を具現化した存在で、破壊と再生を司ると同時に、子どもを守護する神々です。
ヨーギニーたちは母親の祈りに応え、見えざる災いから子を守る力があると信じられています。
地域によってはシヴァ神の従者ヴィーラバドラの像も加えられ、ヨーギニーのエネルギーを正しく導く儀礼が行われます。
また、新月を意味するアマーヴァシャーは、祖霊(ピトリ)の世界と人間の世界が最も近くなる時とされます。
この時に行われる断食や儀礼には、未来を担う子への母の想いと、過去から受け継がれた命への敬意が込められています。
ピトーリー・アマーヴァシャーは、母の祈り、祖先の恩寵、女神の守護、そして命の神秘が一体となる霊的な一日です。
見えざる絆で過去・現在・未来を結び直し、私たちに「生きること」と「受け継ぐこと」の尊さを静かに教えてくれる日として受け継がれています。