ナラシンハ・ドヴァーダシー
ナラシンハ・ドヴァーダシーについて
ナラシンハ・ドヴァーダシーは、パールグナ月(2月〜3月)のシュクラ・パクシャ(新月から満月へ向かう半月)の12日目(ドヴァーダシー)に行われる祭事で、ヴィシュヌ神の第4の化身であるナラシンハ神を讃える日です。
ナラシンハ神は人間と獅子が半分ずつ組み合わさった姿で、帰依者プラフラーダを守り、魔王ヒラニヤカシプを倒した存在として知られています。
このナラシンハ・ドヴァーダシーは、ホーリー・フェスティバルの直前に祝われます。
それは、ホーリー・フェスティバルで讃えられるプラフラーダの神話と深く結びついています。
その神話は、魔王のヒラニヤカシプの伝説から始まります。
ヒラニヤカシプは苦行の末、ブラフマー神から特別な恩恵を受けました。
人間や動物、昼や夜、屋内や屋外、地上や空中、どんな武器にも倒されない力を得て、事実上不死身となります。
傲慢になったヒラニヤカシプは自分を神として崇拝するよう周囲に要求しましたが、息子のプラフラーダはヴィシュヌ神の熱心な帰依者であり続けました。
父親の脅しにもかかわらず、プラフラーダは信仰を捨てませんでした。
怒ったヒラニヤカシプはプラフラーダにさまざまな罰を与え、命を奪おうとしましたが、その度にヴィシュヌ神が介入してプラフラーダを救います。
ついにヒラニヤカシプは宮殿の柱を指さし「もしお前の神がどこにでもいるなら、この柱の中にもいるのか」と問うと、プラフラーダは「はい、私の神はどこにでもいます」と答えました。
怒ったヒラニヤカシプが柱を棍棒で打つと、獅子の頭と人間の体を持つナラシンハ神が現れました。
ナラシンハ神は夕暮れ時(昼でも夜でもない時)に現れ、ヒラニヤカシプを宮殿の敷居(屋内でも屋外でもない場所)に連れ出し、膝の上(地上でも空中でもない場所)に乗せ、鋭い爪(人間のものでも動物のものでもない)で倒しました。
こうして恩恵の条件を守りながら、ナラシンハ神は邪悪なヒラニヤカシプを打ち倒し、宇宙の秩序を守りました。
この神話はプラフラーダの信仰の力を象徴し、ホーリー・フェスティバルで讃えられています。
ナラシンハ・ドヴァーダシーは、信愛の力、善の悪に対する勝利、神の加護を心に刻む機会であり、信仰を持つ者を神が常に守るという教えを示しています。
極度の逆境でもヴィシュヌ神への信愛を持ち続けたプラフラーダが救われたように、神は帰依者のためにどんな形でも姿を現すことができることを伝えています。
ナラシンハ・ドヴァーダシーは、冬から春への移行を象徴する天文学的に重要な時期に行われます。
この祭事を誠実な信愛をもって実践することで、人々は勇気や強さ、正義の精神を育み、人生の試練を乗り越えることができると信じられています。
ナラシンハ・ドヴァーダシーは、信仰と忍耐によって逆境を克服するというヒンドゥー教の教えを伝える祭事として今日も受け継がれています。