シャッティラー・エーカーダシー
シャッティラー・エーカーダシーについて
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、ヴィシュヌ神に捧げられる日となり、断食や瞑想を行うことが勧められます。
マーガ月(1月〜2月)のクリシュナ・パクシャ(満月から新月へ向かう半月)の11日目にあたるエーカーダシーは、シャッティラー・エーカーダシーといわれます。
このシャッティラー・エーカーダシーは、罪を清めるとともに健康が授けられると伝えられる吉日です。
一説に、以下のような神話が伝わります。
かつて、裕福で多くの慈善を行う信心深い年配の女性がいました。
女性は人々に衣服、宝石、貴重品など、多くの寄付をしていましたが、食べ物を寄付することは決してありませんでした。
食べ物を寄付することは何よりも価値ある行為であると考えられていたため、ヴィシュヌ神は教えを示すために乞食の姿になり、女性に食べ物を与えてくれるように頼みます。
しかし、女性は怒って御器に土の塊を入れました。
その後、女性が家に戻ると、あらゆる食べ物が土になっていることに気づきます。
女性は何も食べることができず弱っていき、救いを求めてヴィシュヌ神に祈りました。
すると、女性は乞食を軽視した罪を示され、シャッティラー・エーカーダシーに断食を守って祈るようにという導きを得ます。
女性はこれを守るとともにシャッティラー・エーカーダシーに食べ物を寄付すると、苦しみから救われたと伝えられます。
シャッティラーには「6つのゴマ」という意味があり、このシャッティラー・エーカーダシーにおいてはゴマを用いることが重要とされます。
栄養価の高いゴマは不死の象徴とされるとともに、不純物を取り除き、純度を高める優れた力を持つと信じられ、さまざまな儀式において用いられる神聖なものです。
特に、この時期はインドでは冬の終わりにあたり、ゴマは体と心の両方に栄養を与えるものとして重要視されます。
そして、霊性を高めるために、ゴマは以下の6つの方法で用いることが推奨されています。
(1) ゴマを混ぜた水で入浴する。
(2) ゴマのペーストを体に塗る。
(3) ゴマを食べる。
(4) ゴマを火に捧げる。
(5) ゴマを寄付する。
(6) ゴマの寄付を受け取る。
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、神々に祈りながら断食によって感覚器官を統制し、体と心を清める吉日です。
11が意味するものは、5つの感覚、5つの器官、そして心を合わせた11のものであり、エーカーダシーにおいてはそれらを統制することが重要な行いとなります。
この満月・新月からの11日目は、月の満ち欠けから生じる引力の影響から、感覚器官や心の働きが落ち着き、体に感じる空腹の影響も少なく、断食も行いやすいものであると伝えられます。
特に断食は、絶え間なく働き続けていた体のあらゆる部分を休ませ、忙しなくあちこちに飛び散っていた意識を落ち着かせます。
体の浄化に加え、欲から切り離されることで心の雑念までもが洗い流され、神が宿る場所としての肉体、精神が生み出されていきます。
困難を伴う感覚の統制も、瞑想やジャパなどを通じ崇高者に心を定めることで容易なものとなります。
エーカーダシーを通じ瞑想するヴィシュヌ神の本質は、時の流れにかかわらず、宇宙が生成する以前に存在し、そして消滅した後も存在し続けるといわれます。
エーカーダシーは、万物の中にあまねく浸透する存在と一つとなる機会でもあります。