ヴァイクンタ・エーカーダシー
ヴァイクンタ・エーカーダシーについて
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、ヴィシュヌ神に捧げられる日となり、断食や瞑想を行うことが勧められます。
ヴァイクンタ・エーカーダシーは、太陽暦ダヌ月(12月〜1月)またはタミル暦マールガリ月(12月〜1月)のシュクラ・パクシャ(新月から満月へ向かう半月)の11日目にあたります。
ヴァイクンタ・エーカーダシーにおいては、ヴィシュヌ神が住むヴァイクンタという名の天国の扉が開かれると信じられ、インドの多くの寺院はその扉を開きます。
敬虔な人々は早朝に寺院を訪れ、1日を通じて断食を努めます。
このエーカーダシーのヴラタ(戒行)を努める者は、あらゆる願望が叶えられると信じられています。
ヴァイクンタは、物質世界の悲しみや苦しみ、あらゆる制約から解放された、永遠の至福と静寂の場として信じられます。
物理的な宇宙を超えた領域とされ、その神聖な美しさと壮麗さは人間の理解を超えているとされるものの、華麗な宮殿、庭園、水域がある王国として描写されます。
ヴァイクンタは、意識または霊的な実在の状態でもあります。
それは、モークシャ(解放)である究極の目的地を意味し、魂は生と死のサイクル(輪廻)から解放され、永遠の至福と神との一体の状態において存在するとされます。
高次の霊的な成長とヴィシュヌ神への献身を達成した魂は、この地上における人生の後にヴァイクンタへの入場を許されると信じられます。
ヴァイクンタへの道は、真実、献身、そしてダルマ(道徳的で正しい義務)への遵守に結びついています。
ヴァイクンタ・エーカーダシーには、このヴァイクンタの門が開かれると信じられており、人々は断食し、祈りを捧げて、ヴァイクンタへの道を求めるとされています。
※ヴァイクンタ・エーカーダシーは太陽暦に従って計算されるもので、太陰暦ではマールガシールシャ月(11月〜12月)またはパウシャ月(12月〜1月)に該当します。
このため、1年に2回訪れる年がある場合と、訪れない年がある場合があります。
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、神々に祈りながら断食によって感覚器官を統制し、体と心を清める吉日です。
11が意味するものは、5つの感覚、5つの器官、そして心を合わせた11のものであり、エーカーダシーにおいてはそれらを統制することが重要な行いとなります。
この満月・新月からの11日目は、月の満ち欠けから生じる引力の影響から、感覚器官や心の働きが落ち着き、体に感じる空腹の影響も少なく、断食も行いやすいものであると伝えられます。
特に断食は、絶え間なく働き続けていた体のあらゆる部分を休ませ、忙しなくあちこちに飛び散っていた意識を落ち着かせます。
体の浄化に加え、欲から切り離されることで心の雑念までもが洗い流され、神が宿る場所としての肉体、精神が生み出されていきます。
困難を伴う感覚の統制も、瞑想やジャパなどを通じ崇高者に心を定めることで容易なものとなります。
エーカーダシーを通じ瞑想するヴィシュヌ神の本質は、時の流れにかかわらず、宇宙が生成する以前に存在し、そして消滅した後も存在し続けるといわれます。
エーカーダシーは、万物の中にあまねく浸透する存在と一つとなる機会でもあります。