パリヴァルティニー(パールシュヴァ)・エーカーダシー
パリヴァルティニー(パールシュヴァ)・エーカーダシーについて
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、ヴィシュヌ神に捧げられる日となり、断食や瞑想を行うことが勧められます。
バードラパダ月(8月〜9月)のシュクラ・パクシャ(新月から満月へ向かう半月)の11日目にあたるエーカーダシーは、パリヴァルティニー(パールシュヴァ)・エーカーダシーといわれます。
このパリヴァルティニー(パールシュヴァ)・エーカーダシーは、物質的な束縛からの解放がもたらされると伝えられる吉日です。
一説に、以下のような神話が伝えられます。
このエーカーダシーは、7月から続くチャトゥルマーサ(聖なる4ヶ月)において、横になり眠っていたヴィシュヌ神が寝返りを打った日であると伝えられます。
チャトゥルマーサの4ヶ月間、ヴィシュヌ神は眠りにつくと信じられます。
そして、寝返りを打ったヴィシュヌ神は5番目の化身であるヴァーマナへと化身します。
ヴァーマナは矮人でありながら巨大化し、マハーバリ王から全世界を奪い返しました。
マハーバリ王は神々と敵対するアスラの生まれでしたが、人々から愛された偉大な王として知られます。
アスラでありながらも人々から深く愛されたのは、マハーバリ王に信心深く献身的な姿勢があったからだといわれます。
地と空と天の3界は、そんなマハーバリ王に統治され、神々は力を失っていました。
ヴィシュヌ神は世界を神々の手に戻そうと、ヴァーマナに化身しマハーバリ王に歩み寄ります。
そして、3歩分の土地が欲しいと述べると、マハーバリ王は快くその土地を与える約束をしました。
すると、矮人であったヴァーマナが巨人となり、2歩で世界を跨いでしまいます。
信心深いマハーバリ王は、約束通りヴァーマナに3歩分の土地を与えようと、最後に唯一残った領地である自らの頭を差し出します。
そうしてヴァーマナはマハーバリ王の頭を踏みしめ、世界を神々に取り戻させたと伝えられます。
人々から愛されたマハーバリ王が倒されたのは、アスラであったということと、王としてのエゴがあったからだといわれます。
3歩で3界を制したヴァーマナは、そんなマハーバリ王のエゴを破壊し、世界を救います。
それは、私たちのエゴを取り除き、救済する姿を象徴していると伝えられます。
このエーカーダシーにおいて努める戒行は、物質の束縛から人々を解放すると信じられており、あらゆる罪深い行いを清め、自由を求める人々にとってこの日はとりわけ吉祥な日であると伝えられています。
※パリヴァルティニーには「向きを変える」、パールシュヴァには「側面、胸部、肋骨」といった意味があります。
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、神々に祈りながら断食によって感覚器官を統制し、体と心を清める吉日です。
11が意味するものは、5つの感覚、5つの器官、そして心を合わせた11のものであり、エーカーダシーにおいてはそれらを統制することが重要な行いとなります。
この満月・新月からの11日目は、月の満ち欠けから生じる引力の影響から、感覚器官や心の働きが落ち着き、体に感じる空腹の影響も少なく、断食も行いやすいものであると伝えられます。
特に断食は、絶え間なく働き続けていた体のあらゆる部分を休ませ、忙しなくあちこちに飛び散っていた意識を落ち着かせます。
体の浄化に加え、欲から切り離されることで心の雑念までもが洗い流され、神が宿る場所としての肉体、精神が生み出されていきます。
困難を伴う感覚の統制も、瞑想やジャパなどを通じ崇高者に心を定めることで容易なものとなります。
エーカーダシーを通じ瞑想するヴィシュヌ神の本質は、時の流れにかかわらず、宇宙が生成する以前に存在し、そして消滅した後も存在し続けるといわれます。
エーカーダシーは、万物の中にあまねく浸透する存在と一つとなる機会でもあります。