トゥラシー・ヴィヴァーハ
トゥラシー・ヴィヴァーハについて
トゥラシー・ヴィヴァーハは、ヴィシュヌ神とトゥラシー女神の結婚を祝福する祝祭です。
カールッティカ月(10月〜11月)のシュクラ・パクシャ(新月から満月へ向かう半月)の11日目もしくは12日目に祝福されます。
その後の満月までのおよそ4日間にわたって祝福が行われる場合もあります。
トゥラシー・ヴィヴァーハは、7月から続いていた聖なる4カ月間であるチャトゥルマーサの終わりにあたります。
チャトゥルマーサの4ヶ月間はヴィシュヌ神が眠りにつく時とされ、このチャトゥルマーサの終わりにヴィシュヌ神が目覚めると信じられています。
トゥラシー・ヴァヴァーハについてはさまざまな神話がありますが、一説に以下のような神話が伝えられています。
アスラのジャランダラは、ヴィシュヌ神を心から崇拝する女神のヴリンダーと結婚をしました。
ヴリンダーが純潔である限り不滅であるという力を得たジャランダラは尊大となり、この世を恐怖に陥れます。
ヴィシュヌ神はこの世を救うため、ジャランダラになりすまし、ヴリンダーを誘惑します。
ヴリンダーが純潔を失ったため、ジャランダラは戦いによって命を落とし、ヴリンダーはひどく悲しみました。
ヴリンダーはヴィシュヌ神を咎め、ヴィシュヌ神の姿をシャーラグラーマ(神聖な黒石)に変え、自ら命を断ちます。
しかし、ヴィシュヌ神はヴリンダーの魂を純潔の象徴である聖木トゥラシーとし、各家庭で崇拝される姿を彼女に与えます。
そして、ヴィシュヌ神はヴリンダーと結婚をする約束をしました。
トゥラシー・ヴィヴァーハは、ヴィシュヌ神とトゥラシーのこの神聖な関係を称えるものであり、ヴィシュヌ神そのものであるとされるシャーラグラーマと、トゥラシーへの礼拝が広く執り行われます。
トゥラシーはラクシュミー女神の化身としても崇拝され、時にヴィシュヌ神、もしくはクリシュナ神の妻としても描かれる存在です。
聖木としてのトゥラシーはすっきりとして非常に芳しい香りを放ち、浄化の作用があるとして、インドの家庭の庭先には必ず植えられています。
純潔を象徴するトゥラシーは、さまざまな儀式においてもその葉を捧げることが欠かせません。
ヴィシュヌ派の人々にとって、トゥラシーの数珠もまた非常に重要な意味を持つものです。
ヴィシュヌ神が眠りにつくチャトゥルマーサの4ヶ月間においては、結婚の儀式は勧められず、インドではこの間、結婚式が執り行われることはあまりありません。
しかし、このトゥラシー・ヴィヴァーハを境に結婚シーズンが始まり、各地で盛大な結婚の祝祭が続く時となります。