モークシャダー・エーカーダシー
モークシャダー・エーカーダシーについて
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、ヴィシュヌ神に捧げられる日となり、断食や瞑想を行うことが勧められます。
マールガシールシャ月(11月〜12月)のシュクラ・パクシャ(新月から満月へ向かう半月)の11日目にあたるエーカーダシーは、モークシャダー・エーカーダシーといわれます。
このモークシャダー・エーカーダシーは、バガヴァッド・ギーターが誕生した日として崇められる吉日です。
また、このモークシャダー・エーカーダシーには、一説に、以下のような神話が伝わります。
かつて、ヴァイカーナサと呼ばれる信心深い王に統治されたチャンパカナガルと呼ばれる美しい都がありました。
ヴァイカーナサ王のもとで、都は平和で繁栄し、人々は幸せに暮らしていました。
しかし、ある時ヴァイカーナサ王は亡くなった父親が地獄で苦しむ姿を夢で見ます。
ヴァイカーナサ王は父親を救うため、都の聖者を尋ねました。
すると、近くの森に住むトリカーラ・ジュニャーニン(現在・過去・未来が見える者)であるパルヴァタ仙を尋ねるように勧められます。
そして、ヴァイカーナサ王がパルヴァタ仙を尋ねると、パルヴァタ仙は父親の過去を読み解き始めました。
これにより、父親には妻を虐げた過去があることがわかりました。
パルヴァタ仙は、モークシャダー・エーカーダシーを努めれば父親を地獄から救い出し、解脱(モークシャ)に導くことができると伝えます。
そうしてヴァイカーナサ王がモークシャダー・エーカーダシーのヴラタ(戒行)を真摯に努めると、父親は救われ、天に昇ったと伝えられます。
モークシャダー・エーカーダシーのヴラタ(戒行)に取り組む人は、地獄のような生活から解放され、決してこの物質世界には戻らないように、霊性を高める功徳を得ることができると伝えられています。
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、神々に祈りながら断食によって感覚器官を統制し、体と心を清める吉日です。
11が意味するものは、5つの感覚、5つの器官、そして心を合わせた11のものであり、エーカーダシーにおいてはそれらを統制することが重要な行いとなります。
この満月・新月からの11日目は、月の満ち欠けから生じる引力の影響から、感覚器官や心の働きが落ち着き、体に感じる空腹の影響も少なく、断食も行いやすいものであると伝えられます。
特に断食は、絶え間なく働き続けていた体のあらゆる部分を休ませ、忙しなくあちこちに飛び散っていた意識を落ち着かせます。
体の浄化に加え、欲から切り離されることで心の雑念までもが洗い流され、神が宿る場所としての肉体、精神が生み出されていきます。
困難を伴う感覚の統制も、瞑想やジャパなどを通じ崇高者に心を定めることで容易なものとなります。
エーカーダシーを通じ瞑想するヴィシュヌ神の本質は、時の流れにかかわらず、宇宙が生成する以前に存在し、そして消滅した後も存在し続けるといわれます。
エーカーダシーは、万物の中にあまねく浸透する存在と一つとなる機会でもあります。