ウトパンナー・エーカーダシー
ウトパンナー・エーカーダシーについて
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、ヴィシュヌ神に捧げられる日となり、断食や瞑想を行うことが勧められます。
マールガシールシャ月(11月〜12月)のクリシュナ・パクシャ(満月から新月へ向かう半月)の11日目にあたるエーカーダシーは、ウトパンナー・エーカーダシーといわれます。
このウトパンナー・エーカーダシーは、エーカーダシーを始めるもっともふさわしい日であると伝えられます。
エーカーダシーの習慣を身につけようと試みている人、またエーカーダシーを実践してみたいと感じている人に、成功をもたらすと伝えられています。
エーカーダシーは、凶悪な悪魔を倒すためにヴィシュヌ神から生まれた女神としても崇められる存在です。
かつて、ヴィシュヌ神は神々を倒した悪魔ムーラに戦いを挑みました。
しかし、聖なる武器であるスダルシャナやガダーを用いても、凶悪なムーラを倒すことができません。
その戦いは、1000年にも及んだといわれます。
ある時、ムーラは眠っていたヴィシュヌ神を攻撃しようとします。
すると、ヴィシュヌ神の体から力強い少女があらわれ、ヴィシュヌ神を守るとともに、ムーラを倒しました。
ヴィシュヌ神は目覚めたとき、少女が誰だか分かりませんでした。
すると少女は、ヴィシュヌ神のヨーガ・マーヤーとしてあらわれた光輝であると答えます。
ヴィシュヌ神は、そんな少女に恩恵を授けようとします。
少女は、「私のために断食をする人は、あらゆる罪を清められ、救いを得ることができるよう、私に力を授けてください。」と述べます。
ヴィシュヌ神は、少女の神聖な行いに心を打たれ、エーカーダシーに生まれたこの少女を女神とし、このエーカーダシーの断食を行う者を罪から解放すると信じられています。
エーカーダシー女神は、ヴィシュヌ神の守りの力のあらわれとして崇められます。
ウトパンナー・エーカーダシーは、このエーカーダシー女神の降誕日としても祝福されます。
月の満ち欠けのそれぞれ11日目に訪れるエーカーダシーは、神々に祈りながら断食によって感覚器官を統制し、体と心を清める吉日です。
11が意味するものは、5つの感覚、5つの器官、そして心を合わせた11のものであり、エーカーダシーにおいてはそれらを統制することが重要な行いとなります。
この満月・新月からの11日目は、月の満ち欠けから生じる引力の影響から、感覚器官や心の働きが落ち着き、体に感じる空腹の影響も少なく、断食も行いやすいものであると伝えられます。
特に断食は、絶え間なく働き続けていた体のあらゆる部分を休ませ、忙しなくあちこちに飛び散っていた意識を落ち着かせます。
体の浄化に加え、欲から切り離されることで心の雑念までもが洗い流され、神が宿る場所としての肉体、精神が生み出されていきます。
困難を伴う感覚の統制も、瞑想やジャパなどを通じ崇高者に心を定めることで容易なものとなります。
エーカーダシーを通じ瞑想するヴィシュヌ神の本質は、時の流れにかかわらず、宇宙が生成する以前に存在し、そして消滅した後も存在し続けるといわれます。
エーカーダシーは、万物の中にあまねく浸透する存在と一つとなる機会でもあります。