マントラについて

オーム・ナマ・シヴァーヤ

このマントラは、あらゆるヴェーダやタントラの核心であるといわれています。「ナマ・シヴァーヤ」は、ルドラムの中で頻繁に見ることができます。またアーガマ・シャーストラでは、その意味が詳細に述べられています。

ナッチンタナイは次のように述べています。
「ナマ・シヴァーヤは、アーガマとヴェーダの真理をなすものです。ナマ・シヴァーヤは、すべてのマントラとタントラを表現しています。ナマ・シヴァーヤは、わたしたちの魂であり、肉体であり、財産です。ナマ・シヴァーヤは、確実にわたしたちを守ってくれます。」

このマントラの意味を明確にすることは容易ではありません。単純な訳語では、「わたしはシヴァ神に帰依します」という意味になります。しかし、この訳は、すべてを表現していません。シヴァには、吉兆という意味があるため、このマントラは吉兆に敬意を示すという意味もあります。シヴァは、本などで書かれているように、単なる破壊の神としてではなく、文脈の中でその意味を判断する必要があります。

シャイヴィズム(シヴァ派)やその他のヒンドゥー教の組織では、シヴァは、神々の源となる無形の超越的な存在(パラマーシヴァ)とされています。これは、他のすべての存在の源と考えられ、他者と切り離された神ではなく、すべての人の中心に内在している神とされています。シヴァは、外部にあるわけでもなく、あなたと切り離されたものでもなく、むしろ、あなたの心の中心に存在するものです。
このマントラの訳語よりもさらに重要なことは、その音と波動にあります。その他すべてのマントラと同じように、マントラの意味よりは、音により大きな重点が置かれます。このマントラは、「ナ」、「マ」、「シ」、「ヴァ」、「ヤ」の5音節(パンチャークシャラ)のマントラとして知られています。マントラのはじめには、すべてのマントラや音の起源となるマハービージャ(種子)の聖音「オーム」によって構成されます。マントラに含まれた音節は、それぞれに意味と特性があるとされています。

サットグル・シヴァーヤ・スブラフマニヤスワミは、次のように述べています。 「"ナ"は、神の隠れた恩寵を、"マ"は世界を、"シ"はシヴァを示し、"ヴァ"では、彼の恩寵を明らかにし、"ヤ"は(救済された)魂をあらわす」

そして、次のように続けます。

「五元素も、この古代の呪文によって発動されたものである。"ナ"は地、"マ"は水、"シ"は火、"ヴァ"は風、"ヤ"は空(エーテル、アーカーシャ)である。」

パラマーハンサ・ムクターナンダも、このマントラが精神や霊的な道にいかに有用であるか、雄弁に語っています。このマントラを唱えることで、タマス(暗質)とラジャス(激質)を取り除き、高尚な霊験に適した、純粋な心の状態を作るといいます。

ムクターナンダはこう述べています。
「このマントラに潜在する力は、偉大な神秘です。わたしたちがナマ・シヴァーヤの5音節を唱えるとき、肉体を構成する五元素が浄化されます。それぞれの音節は、それぞれの要素に対応します。ナの音節は地の要素に、マの音節は水の要素に、シの音節は火の要素に、ヴァの音節は風の要素に、そしてヤの音節は空(エーテル)の要素に対応します。それぞれの音節は、対応した要素を浄めます。肉体や心が完全に清らかでないとき、わたしたちが霊的修行から得る恩恵は限られたものになります。それゆえ、心身を浄めるために、オーム・ナマ・シヴァーヤを唱えます。」

ヨーガ・マガジンで、スワミ・ニランジャナーナンダ・サラスワティーは、マントラの波動的な性質と、主要なチャクラの関係について、いくつか詳しく解説しました。彼は次のように述べています。
「例えば、わたしたちが"オーム・ナマ・シヴァーヤ"を唱えるとき、わたしたちはシヴァ派になるわけでもなく、神を崇めたり、帰依したりするのでもなく、これは、さまざまなチャクラのエネルギーを刺激していることになります。"オーム"は、心の純粋さ、創造性、直感に対応するアージュナー・チャクラの音です。"ヤ"あるいは"ヤム"は、アナーハタのマントラです。"ヴァ"あるいは"ヴァム"はスヴァーディシュターナのマントラです。これと同じように、"ナ"、"マ"、"シャ"も、それぞれ異なるチャクラに対応する音節となります。」

ここで聖者スブラフマニヤスワミは、マントラとチャクラ、そしてプラーナやアストラルのような事柄について解説しています。「"オーム・ナマ・シヴァーヤ"が繰り返されるとき、わたしたちはナ・マ・シ・ヴァ・ヤ・オームのチャクラを通過します。オームは頭頂のチャクラです。ナマ・シヴァーヤは、地・水・火・風・空の要素をなし、すべてに浸透する意識へと変革します。そして、"オーム"の終わりは、頭頂よりさらに上の偉大なチャクラへと続きます。呼吸をするように、「オーム・ナマ・シヴァーヤ・オーム・ナマ・シヴァーヤ・オーム・ナマ・シヴァーヤ……」と繰り返し唱える時の間は、至高の存在に到達するための空間であり、魂、心、精神、肉体の世界へいったん後退し、それらすべてを新たなエネルギー、新たな生活、新たな知力で祝福する時です。「ナマ・シヴァーヤ・オーム、ナマ・シヴァーヤ・オーム、ナマ・シヴァーヤ・オーム」は、絶え間なく続く人生の過程であり、人生の本質を示しています。」

声に出しても、心の中で唱えても、このマントラを繰り返し唱えてみてはじめて、聖者が述べているような味わい深い甘露を味わうことができるでしょう。

パンチャークシャラ・マントラの唱え方について

マントラを唱える方法について、パラマハンサ・ムクターナンダは、「静かに(マーナシカ−心の中で唱える)、話すのと同じ速さで唱えるのが理想である」と言っています。呼吸に合わせ、息を吸うときに一度、吐くときに一度唱えるのも良い方法です。ムクターナンダによると、このように唱えるなら、マントラは心を浄化し、また唱えられたマントラは体内をかけめぐって、その振動とともに血液細胞に浸透します。日々マントラを唱える部屋では、「その壁にさえマントラは浸透する」とムクターナンダは言います。このことについて、彼は自らの体験を次のように説明しています。

『インドにあるわたしのアシュラムには、わたしが長い間生活した特別な部屋がありました。わたしはそこで瞑想し、マントラを唱えていました。やがてわたしは他の部屋へと移ったために、その部屋は閉ざされていました。数年前、政府の役人がアシュラムを訪れたのですが、その際彼は、私に言いました。
「多くの人があなたのアシュラムではたやすく瞑想に入れると言っているのを聞きました」
そこで、わたしは彼を例の部屋へ連れて行き、中を見せ、座って瞑想するように言いました。
「マントラは何を唱えればいいでしょう?」
と聞かれたので、
「部屋の中でマントラが聞こえてきたら、それを唱えてください」
と答えました。瞑想を終えて部屋を出るとき、彼は言いました。
「壁からオーム・ナマ・シヴァーヤが聞こえてきました。なんと部屋全体がオーム・ナマ・シヴァーヤを唱えていたのです!」
マントラは生きた力です。長い間一心に繰り返すことで、あなたを取り巻く環境すべてにそれは染み込むのです。』

太古からインドの偉大な聖者や悟りを開いた人々の多くは、オーム・ナマ・シヴァーヤのマントラを推奨し、常にこれを唱えることを勧めました。なぜこのマントラがそれほど特別なものであるのか、スワミ・スブラムニヤスワミは次のように述べています。
「オーム・ナマ・シヴァーヤがこのように価値あるマントラであるのは、それが真我から心へと流れている音に最も近いためです。それは真我(つまりはシヴァ、あなたの内なる神、ハイヤーセルフ)へと至る確実な道であるため、オーム・ナマ・シヴァーヤを唱えることは意義深いことなのです」

聖仙ウパマニュ(リグ・ヴェーダの作者のひとりとされる)は、「特別な儀式を要せず」、「時間の制約なく」、「外的な条件の束縛もない」というオーム・ナマ・シヴァーヤの神秘について説いています。
「もしこのマントラがあなたの心の内に響き続けるなら、苦行も瞑想もヨーガも必要ない。このマントラに、儀式や祭式は必要なく、また唱えるべき時刻も、唱えるべき場所もない。」

また、このマントラはすべての人に開かれたマントラであることは特筆すべき点です。パラマハンサ・ムクターナンダは「このマントラは規則、規制にしばられない」と言っています。 「オーム・ナマ・シヴァーヤには、いかなる制限もなく、老いも若きも富める者も、貧しき者も唱えることができる。たとえその人がどのような状況にあろうと、オーム・ナマ・シヴァーヤはそれを唱える者を清める。」
ムクターナンダは言います。
「摩訶不思議かな、オーム・ナマ・シヴァーヤ。唱えよ、唱えよ、ひたすら唱えよ」

熱意を持ってオーム・ナマ・シヴァーヤを唱える人々は、サムサーラの海を渡り、悟りの彼岸に至るといわれています。このマントラを唱えていたカシミールの偉大な聖女ララ、すなわちラル・デッドは次のように述べています。

「正しい知識を持ち、耳を傾け、聞くのです。木々がオーム・ナマ・シヴァーヤに合わせて、いかに身を揺らすのかを。風がそよぐとき、いかにしてオーム・ナマ・シヴァーヤを唱えるのかを。ナマ・シヴァーヤの音とともに、いかにして水が流れるのかを。全宇宙がシヴァの名を唱えているのです。そのことに気づくには、わずかに注意を払えばよいのです」

このマントラを唱える機会に恵まれ、熱心に努力するならば、やがてその果報として多くのものを得るでしょう。現代生活ではジャパのための時間を十分に作ることは難しいかもしれません。しかし、テレビを見たり、会話を楽しむための時間があるならば、その気になれば、毎日でもジャパやマントラのために10分間をさくことくらいはできるはずです。一度その価値を知った人は、そこから得られる恩恵は、純金よりも価値があることを知ることでしょう。

「ルドラークシャ・ビーズを身につけ、パンチャークシャラ・マントラを唱えなさい。心が柔和になり、溶け出すでしょう。愛を込めてこの5文字のマントラを唱えれば、シヴァの心を見るでしょう。そして、不純なもの、心配、疑念は破壊されます。」-シヴァ・ヨーガスワミ