Concert in Berlin
SM-Concertinberlin

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アルバム「Conncert in Berlin」は、スリスワミジの1999年8月のベルリン・コンサートのライブ盤です。スリスワミジの歌も含む臨場感溢れる生演奏が、かなりの音質で楽 しめるだけでなく、様々な要素で学び、楽しみ、分かることが出来る逸盤ではないかと思います。
 
まず、収録曲が、異なる趣きのラーガ(旋法)で10曲もありながらも、10分、14分の曲もあり(もちろん実際のライブはもっと長いでしょう が)、満足度も高いと思われます。バック・ミュージシャンには、Dr.L.Subramaniam氏などのビッグネームは加わっていませんが、南インド古 典音楽第一線メンバーによる楽団の他、おそらく現地ドイツのスリスワミジの熱心な弟子のようなドイツ人(?)も二名加わっています。

音楽的内容は、何時もながら高度な「療法音楽」の他、異なるラーガ(旋法)を堪能出来て、「インド科学音楽」及び「南インド古典音楽」を知り学ぶ 上でもありがたいアルバムと言えましょう。加えて、スリスワミジ生の声の曲目紹介が少しあり、その人柄や温かみに触れられるところが貴重であると思われま す。
 
スリスワミジの「Nada-Yoga:療法音楽(形態は演奏会)」には、「Raga-Sagara」「Raga-Ragini- Vidya(Vidhya)」「Nada-Upasana」などの幾つかのテーマがあり、このコンサートの「Raga-Ragini- Vidya(Vidhya)」は、「ラーガとラーギニ(旋法)の智恵(科学、理解)」という意味合いと思われ、特にこのライブ盤では、「Pancha- Bhuta(万物の五元素)及びTattva(根源的要素)」がテーマになっていたようです。スリスワミジの各曲前の解説でも、「どの元素(要素)にちな むか?」が述べられています。

アルバムと作品

このアルバム「Conncert in Berlin」は、全10曲が、スリスワミジ作の南インド古典音楽に基づいた「Bhajan(献身歌)」の主題を用いた、南インド古典音楽の伝統的手法に よる即興演奏「Swara-Kalpana」ですが、二曲、スリスワミジ自身の生の声でBhajanそのものも歌われています。
CDインデックスでは、1960年代に世界的に知られることとなった有名な「ラーマ讃歌」が納められているとありますが、どうもCDリリース・スタッフの誤りのようです。

楽曲と音楽

一曲目のスリスワミジ自作の「Bhajan(讃歌)」「Pranava Swarupam」は、いわば「真言権化」のような意味なのでしょうか? 「Pranava」は、宇宙の波動「Nada」の原点であり、真言「OM」を意味すると思われます。
「Swarupa」は、ヨガを勉強されている方にはお馴染みの言葉ですが、音楽では別な意味合いもあり、ラーガ(旋法)の全体像のことでもあります。
 印欧語属的に英語の「スロープ」とも共通する言葉で、「OM」の単音から始まり、山並みを描くように旋法の動きが広がって行くイメージを感じさせます。

 このBhajanの主題を用いた即興演奏は、「Raga:Kedara-Nandini(ケダーラ・ナンディーニ」で演奏されると語られていますが、このラーガは、手許の資料では見当たらないので、自作の可能性もあるかも知れません。

 南インド古典音楽の72の基本旋法「Melakarta(メーラカルタ)」で言うならば、第29番の「Dheera-Shankara-Bharanam(ディーラ・シャンカラ・ヴァラナム)」に属すると思われ、全く同じ旋法に「Raga:Vilāsini(ヴィラースィニ)」がありますので、同旋法異名かも知れません。と言うのも自作や新たな解釈でしたら、後の曲でスリスワミジ自身そうおっしゃっていますので。ここでは伝統的なラーガ(旋法)として演奏しているようにも思えます。用いる音階を「ドレミ」で言うと、「ラを用いない六音音階」です。
 つまり、長調を基本にした旋法の六音階なので、明るさと繊細さと高貴さを併せ持った個性が感じられるラーガということが言えます。

 スリスワミジ自身の解説でも、それを裏付けるように「Suriya(太陽神)にちなむ」とおっしゃっています。
 
 用いられているTala(ターラ:リズムサイクル)は、このアルバムではいずれの曲も、ノリの良い四拍子系の「Adi-Talam(8拍子)」です。
 
 二曲目のガネーシュ神に捧げるBhajan「Gam Gam Ganapati」は、「もしかしたらテーマソング?」というほど大変人気のある有名なBhajanで、冒頭でスリスワミジ自身の歌を聴くことが出来ます。

 用いられるラーガ(旋法)「Raga:Kalyani(カルヤーニ)」は、第65MelaのJanaka(主/親ラーガ)の「Raga:Mecha-Kalyani」の俗称です。このラーガ(旋法)は、ほぼ同名の「Kalyan、Yaman-Kalyan、Yaman(流派によって呼び名や若干の解釈の異なりがある)」などとして、北インド古典音楽でもたいへん有名なものです。「ドレミ」で言うと「ファ#」を用いる音階を基本にしています。

 「ファ#」というと馴染みが無い感じもしますが、インド古典音楽では、「ドとソ」が不変的な基本音ですから、「ファ#」は、「シ♮」と同様に、「基本音の半音下」つまり、基本音への導入性のテンションが強いという解釈では、「これこそが本当のメジャースケールである」ということも出来るのです。つまり、私たちは普通の長調のドレミの「ファ♮」に馴れてしまっていますが、本来は「ファ♮」は、中途半端であり、極論すれば「短調的な音だ」とも言える訳です。

 したがって、この曲は、極めて元気をくれるラーガ(旋法)であると言えるのです。その意味でも「物事の始まりと道行きを司る(導く)神:ガネーシュ」にうってつけのラーガ(旋法)と言えるでしょう。
 スリスワミジご自身は、「呼吸器、胃がん、心臓病、頭痛」に効果があると述べています。
 
 三曲目の「Shakarani」の曲名の意味は、あくまで想像ですが「Shakarna(Healing)+Rani(Qeen)」でしょうか? これも私の思い込みかも知れませんが、スリスワミジの天性の発想の中には、語呂合わせ的に新語が次々と生まれて来るところがあるように思えます。これはインド科学音楽を熟知熟練した人には当然の「発想力」ともいえます。

 と言いますのは、ラーガ(旋法)のひとつのフレイズの末尾は、次のフレイズの冒頭でもあり、時には別個の橋渡しのフレイズが置かれたりするからです。そうやって、「しりとり法」と「二元論的対比法」とを織り交ぜながら「不二一元的」な「ラーガのPrakuriti(神髄/本質)」に迫って行くのです。
 なので「Shakarani」は、単に私の寡聞なだけで、もしかしたら既存の有名な言葉なのかも知れませんが、そうでなかったとしたら、極めて科学音楽的な造語なのかも知れないのです。

 そもそも南インド古典音楽のラーガ(旋法)の名前の多くが、「語呂合わせ」や「洒落」をふんだんに含んでいます。その典型例は、スリスワミジのCD「Birds Zodiac」の12曲目のラーガ名に見られ、ライナーで説明させて頂いておりますので、合わせてご覧下さい。つまり、スリスワミジの「タイトル作り」には、南インド古典音楽の数千年の伝統的センスが基本にあると考えられるのです。

 用いるラーガ(旋法)は、CDクレジットでは「Raga:Varam」となっていますが、おそらく第22Melaの「Raga:Kharaharapriya」に属する、「Raga:Suddha-Hindolam」の別名「Raga:Varamu」であろうと思われます。
 スリスワミジ自身は、Akash(空)、Vayu(風)にちなみ、新しいラーガ(旋法)であるとおっしゃっていますが、「新しいVaramである」と言い直されているところから、伝統的なラーガ(旋法)に新たな解釈(音の動き)を加えたと考えられます。

 「ドレミ」で言うと、「ミ♭とシ♭」なので、いわゆる「短調」ということになりますが、このラーガ(旋法)は、「基本音(の属音)ソ」を割愛しているのです。従って「伴奏音」は「ドとソの五度」ではなく「ドとファの四度」が鳴り響き、逆転して「ファがド、ドがソの五度」に聴こえる結果、完全な長調とも異なる「柔らかく明るい長調」に感じるものです。これは北インドでも好まれ(北では「Raga:Bageshri」)、南北演奏家によって世界の聴衆にも好まれています。
 
 四曲目の「Isha Patisha」も語呂合わせのような気がします。「豊かさとその主」のような意味でしょうか? 正解をご存知の方、ぜひ教えて下さい。
 と言いますのも、この曲のラーガ(旋法)「Raga:Mohana」は、日本の唱歌の「四七抜調」と同じ音階を用いながらも、奥深い意味を持つラーガ(旋法)であるからです。
 元素(要素)は「Jala(水)」「Vayu(風)」である、とのことです。

 「Raga:Mohana」のMelaは、第28番の「Raga:Hari-Kambhoji」です。このラーガ(旋法)を、北インドの「Raga:Bhupali」と同一視する専門家は多いですが、「Raga:Mohana」は「Raga:Hari-Kambhoji」の「ファ♮」を割愛したものであるのに対し「(北)Raga:Bhupali」は、「Raga:Kalyan」の「ファ#」を割愛したものであり、「ファ♮割愛の五音階」でしたら「(北)Raga:Deshkar」という別なラーガ(旋法)なのです。

五曲目の「Raindrops Melody」のラーガ(旋法)の元素(要素)も「Jala(水)」「Vayu(風)」であるとのことで、曲目どおり「雨だれ」を意味しているとおっしゃっています。
 CDインデックスには、「Raga:Matuashini」とありますが、私の耳には「Raga:Madhuvarsini」と聞こえます。おそらくこれが正解なのだろうと思います。が、それでも手許の資料には見当たらず、かなり珍しいラーガ(旋法)か、既存のラーガ(旋法)の異名(別名)か、自作かも知れません。

 「ドレミ」で言うと、「ミ♭とシ♭」で、第22Melaの、「Raga:Kharahara-Priya」系のラーガ(旋法)の中でも、クセのない素直な上下行音楽列を用いるものと思われます。それもあってか、途中西洋音楽風にハモったりもしています。

 また、北インド古典音楽のように、後半になってどんどんテンポを上げていますが、モニター音の問題(音響的な)もあるのか? Violinと太鼓Tablaがズレまくるところも或る種の臨場感が楽しめます。もちろん、巨匠 Dr.L.Subramaniam氏などが加わったライブではあり得ないことなので、「伴奏者の技量の問題」もあるかも知れません。

 しかし総てが「伴奏者の技量の問題」とも言い切れないのは、そもそも、南インド古典音楽は、通常一貫して一曲のテンポは変わらないのです。ある意味で、その不変性が、科学音楽の踏襲を意味しているのですが。
 その代わり、「一拍を五分したものを七つづつ組み合わせ」などの高度な拍数分解奏法の驚異の技法を見せるのです。逆に言うと北インド式にテンポを上げることは、「基本がブレる」くらいに不慣れなことかも知れません。
 同じ大きさ形の皿に、見事な盛りつけの技量を見せる板前さんや点心の料理人に、次々に皿が小さくなって行くことを要求しているような感じもあるのかも知れません。それはそれで、南北インド音楽の意外ながらも大きなギャップを感じさせて興味深いところではないでしょうか。

 六曲目の「Saraswati Saramati」も、たいへん語呂の良いタイトルと思われます。「Saramat」は、用いるラーガ(旋法)、Mela第20番の「Raga:Nata-Bhairavi」のJanya(子)ラーガ(旋法)の「Raga:Saramati(サーラマティ)」であると共に、南インドの人々にとっては元来は外来語であろう「礼/挨拶」を掛けて、「Saraswati女神」に捧げる曲としたのではないかと思います。

 「Raga:Saramati」は、第20番Melaの「Raga:Nata-Bhairavi」のJanya(子)Ragaで、「ドレミ」で言うと、「ミ、ラ、シが♭」の短調です。
 しかし、このラーガ(旋法)では、上行音列が「Sampurna(七音)」ですが、下行音列は「ソとレを割愛するAudava(五音)」です。

 通常、上下とも同じ「七音、六音、五音」ではない場合、上行音列に割愛があっても下行音列は七音であることが一般的です。

 これは「人間の普遍的な心理」に根ざしています。喩えば、駅の階段を駆け上がる時には、一二段飛び越してもなんら怖いこと危ないことなく急ぐことが出来ても、逆に一二段飛び越して駆け下りるのはけっこう危険ではないでしょうか? 

 それと同じに上行音列に於ける割愛は、むしろ上昇性を増して効果的とも言えますが、下行音列での割愛は、悪戯に不安感を煽る可能性があるのです。

 しかし、南インド古典音楽の数千のラーガ(旋法)には、多くの「机上の理論」的なものもあり、リストには存在しているのです。
 つまり「論理的に存在した旋法」は、必ずしも「人間感覚にとって心地良いとは限らない」ということです。しかし、この「Raga:Saramati」の場合、不思議な心地良さがあります。

 スリスワミジが選んだ、この「Raga:Saramati」の場合、長音階ですから明るく聴こえ、逆に、主題末尾の「高域のドレミドシラ」から「ドシラファミド」と一気に駆け下りる所が「切なさ」を感じさせ、ラーガ(旋法)の個性を強く印象させるものがあると思います。

 元素は「Akash(空)」で、ここでは、「Guna(属性)」の「Sattva(純正)」も述べてらっしゃいます。目、耳、アレルギー、不眠症に効果があるとおっしゃっています。

 七曲目の「Gauri Taye」の曲名の意味は、検討が着きません。ラーガ(旋法)は、Mela第16番の「Janak(親/主)」ラーガ(旋法)である、たいへん有名な「Raga:Chakravakam」です。

 八曲目の「New Hope」では、南北を通じてとても有名な南インド古典音楽のラーガ(旋法)を用い、背痛から三段階で、関節痛、神経痛を改善しながら、神経系に新鮮さを与え、「第一Chakura:Mulladhara」を活性させるようにおっしゃっていると聞こえました。
 
 その有名なラーガ(旋法)は、Mela第21番の「Janak(親/主)」ラーガ(旋法)である、「Raga:Kirwani/Kiravani(キルワーニ、キーラヴァニ)」で、「ドレミ」で言うと、「ミとラが♭」の短調系の音階を用います。用いられているTala(ターラ:リズムサイクル)は、ノリの良い四拍子系の「Adi-Talam(8拍子)」です。

 九曲目は、スリスワミジご自身の解説では、「北インドの有名なラーガ(旋法)でRaga:Brindavani-Sarang」とおっしております。
このRagaは、北インドのマトゥラー川のほとりのKrishna神の聖地である「ブリンダーヴァンの森」にちなんだもので、
「ドレミ」で言うと、「ドレファソシド」の五音音階で、「シ」は、上行では「シ・ナチュラル」で、下行では「シ・フラット」なので、
使い分けを数えると六つの音の音階を用いています。スリスワミジがおっしゃるとおり、ひじょうに有名なRagaです。

 十曲目の「Mangalam」の語は、ヨガやマントラなどを勉強されている方にはお馴染みの言葉でしょう。一言で言うのは難しいですが「吉祥」や「平穏」ということでしょうか。このテイクでは、即興演奏はほとんどなく、冒頭の解説も曲名程度ですが、とても明るく、楽しい曲です。

 用いられるラーガ(旋法)は、ご自身「Raga:Sama(サマ)」とおっしゃっていますが、おそらく第28Mela「Raga:Hari-Kambhoji」の「Janya-Raga(子ラーガ):Raga:Shyama(シャーマー)」であろうと思われます。「Shyam」は、「墨」の意味でKrishnaの隠語ですが、ナーガリー文字で確認しないと同じ文字(言葉)かは分かりません。
 「ドレミ」でいうと「上行音列でミを省く場合、や、大きくジグザグに動く」と「上下ともシを省く」が特徴の「Vakra(ジグザグ)-Shadava(六音音階)」のラーガ(旋法)です。
 興味深いのは、これほど楽しい曲であるにも拘らず、演奏直後に大喝采が無いのです。その代わりにスリスワミジが、興味深いアドヴァイスを語ります。そして、その後に喝采と掛け声があがります。つまり、ドイツのお客さんは、「療法音楽」との接し方に既に馴れているのでしょう。
 尤も、曲の直後に喝采が入っている曲もあるので、スリスワミジが何らかの合図をしたので聴衆は、固唾を飲んで集中していたのかも知れません。
 
 などなどと、想い描き想像する話題が豊富なこのCDです。初コンサートに向けて是非ご堪能をお奨めするべき一枚と言えましょう。

解説文:若林忠宏(アーユルヴェーダ音楽療法士)

収録内容
1. Pranava Swarupam “Raga Kedaranandini” (04:20)
2. Gam Gam Ganapathi “Raga Kalyani”( 05:06)
3. Shakaram “Raga Varam” (10:06)
4. Isha Patisha “Raga Mohana” (06:16)
5. Raindrops Melody “Raga Matuashini” (04:34)
6. Saraswati Saramati “Raga Saramati” (03:28)
7. Gauri taye “Raga Saramati” (14:19)
8. New Hope “Raga Cakravaka” (12:01)
9. Raghupati Raghava Raja Ram “Raga Kapi” (05:45)
10. Mangalam “Raga Sama” (08:09)

収録時間:1:16:00
レーベル:Avadhoota Datta Peetham, India

スリ・ガナパティ・サッチダーナンダ・スワミジ
Sri Ganapati Sachchidananda Swamiji
(略称:スリ・スワミジ)
音楽家、教育者、社会奉仕家

1942年、南インドのマケダトゥに生まれる。幼少期より人々の 必要に応え、問題を解決する認識力において優れた資質があり、多くの人々の支えとなる。1966 年、南インド・マイソールで、 教育、医療、音楽、ヨガや ヴェーダなどのインド文化が一体となった教育施設「アヴァドゥータ・ダッタ・ピータム」を設立。
1980年代から、「瞑想と癒しのための音楽」をコンセプトにインドの伝統音楽とシンセサイザーを組み合わせたコンサートを開催。クリシュナデーヴァラーヤ大学博士号(音楽)。
2015 年4月、シドニーオペラハウスにて同時に1824 人が参加した最大規模のミュージックセラピーでギネス公式記録。